おおいた暮らし

INTERVIEW「絵本作家 ザ・キャビンカンパニー」大分市在住のクリエイターの声をもとに、新しい大分市の魅力を発見するインタビュー企画「アートの視点」。今回は絵本作家ユニットとして活躍する「ザ・キャビンカンパニー」の阿部健太朗さんにお話を伺いました。
ザ・キャビンカンパニーとは?1989年生まれ、ともに大分県生まれ大分市在住の阿部健太朗と吉岡紗希の二人組の画家・絵本作家。大分大学で出会い、卒業後、地元大分県を拠点に全国のギャラリーで展覧会、絵本やイラスト、ワークショップ等さまざまな分野で幅広く活躍中。
美術初心者同士のふたり。大学での作品作りがきっかけ ー お二人の出会いは大分大学在学中と伺いました。
はい、同じ教育福祉学部で美術を専攻していました。美術専攻は4人しかおらず、男性は僕ひとり。でもずっと4人一緒に行動していましたね。その中でも、僕と吉岡は大学まで絵を本格的に勉強したことがない初心者同士。なので、それをきっかけに特に仲が良かったです。ある時、ふと「とにかくずっと絵をやっていたい」と吉岡に言ったことがあるんです。彼女も同じ思いだったようで、「いつか絵を仕事にしたい」とよく話していました。
ー なるほど。では実際にふたりで創作活動を始めるきっかけになったのは?
大学2年のとき、美術専攻の4人で展覧会をすることになり、初めて人前に作品を発表する機会がありました。そのとき、僕と吉岡の作品がアクリル絵具のイラストで雰囲気が似ていることに気づいたんです。さらに、作品を見た美術専攻の先輩が僕らに「イラストをそのままポストカードにして文化祭で売ってみない?」と言ってきて、2人とも軽い気持ちで販売したら、意外と売れたんですよ!「1日で2万稼げるなら、アルバイトを辞めよう!」と当時ピザ屋でアルバイトしていたのをすぐに辞めてしまったくらいです(笑)。それが、ふたりともずっと夢だった絵の仕事を始めるきっかけになりました。
がむしゃらに絵を描き続けたある日、絵本製作を志すことに ー 大学時代に路上販売もしていたとか?
そうですね。ありがたいことだと思います。ただデビュー作である「だいおういかのいかたろう」(鈴木出版)が出版されるまでは、どこの出版社に持ち込んでも断られ続けました。この作品が日本絵本賞読者賞を受賞したことをきっかけに、断られた出版社からもお声をいただくようになり、次作「よるです」(偕成社)が出版され、どんどん話が展開していった感じです。全国の書店に置かれるようになり、見てくれる人がすごく増えたという実感がありますね。
デビュー作となった『だいおういかのいかたろう』(鈴木出版)
ー 作品作りで大切にしていることは何ですか? 「よるです」の一場面
僕らは版画みたいにベニヤ板にどんどん色を重ねていく作風を大切にしているんです。そのため、背景などはそのときの色や絵の重ね方によるので、出来上がりがどうなるか僕らもわからないんです(笑)。「よるです」の中の花火、星、海、建物の色なんか分かりやすいですよ。完成したとき「こんな風にできるんだ」とこちらも楽しくなります。作風を変えることなく、子どもも大人もわくわくすることの出来る非現実なファンタジーの世界に連れて行けるような作品につなげたいと思います!
子どもが苦手な夜をユーモアあるストーリーと彩り鮮やかな世界観で表現した絵本「よるです」(偕成社)
故郷・大分で製作活動を続ける、そのこだわり ー 大分を拠点としている理由は?
以前はよく、「地方に引っ込んでいても何もすごいことは出来ない」なんて意見もありました。ただ、地方から発信したいという願望があり、すでに北村さんが第一人者として存在していたことが大きくて、それが励みになってやってきました。大分で絵本作家はこれまでいないから、一番になれると思って邁進してきましたね。大分は家族や友達も近くにいるし、優しい人が多いので生活環境としても魅力的です。
ー 今後大分でどのような展開をしていきたいですか?
2015年は、JR九州とタイアップし、僕らの絵本に登場する冒険列車を再現した「ラッピングトレイン」が走りました。すごく大規模な展開をやらせてもらい良い経験をしたので、今後は、大分で絵本の講演会やワークショップを多く開催して、まちに恩返しが出来たらと思います。僕ら自身がアートと触れ合う機会を増やしていくことで、都会に行かずとも面白いものづくりが出来るんだと知ってもらえたら嬉しいです。いつか大分をはじめ九州に多くの絵本作家が集まるような環境づくりをして、九州に出版社が出来るようになればいいなと考えています。
2015年にはJR九州とのコラボレーションで2人の作品が施されたラッピングトレイン「ブンゴヤージュ号」が運行された。
EDITOR'S NOTE 廃校になった小学校の跡地をまるで夢の国のように色彩ったアトリエで日々作品作りに専念するザ・キャビンカンパニーのふたり。そこから生まれる作品は、大分のアートを牽引する若いふたりの強い想いが詰まったものだと感じました。子どもから大人までを引き込む絵本の魅力をどんどん発信し続ける、ザ・キャビンカンパニーからますます目が離せません!